LHZuoteng 新分野への旅 (新领域之旅/新領域之旅/신 분야로의 여행)

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発音記号・IPA特集 #その2-2 子音2

こんにちは。Zuotengです。

你好。我是Zuoteng。

안녕하세요. Zuoteng이에요.

Здравствуйте. Я Zuoteng.

 

 

 

お久しぶりです。様々な事があり、かなり時間が空いてしまいました。

今回も、前回に続き、IPAについてです。

 

過去のIPAシリーズをご覧になった後だと、今回の記事がより楽しめます。また、過去の回で登場したIPAは既に読めるという前提で話を進めさせて頂きます。

lhzuoteng.hatenablog.jp

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と言う訳で、今回はIPA(国際音声記号)の『日本語、英語の外』その二、子音編です。

 

 

発音名の下の段の( )には、各音が使われる主な言語と、その音を示す、代表的な文字を載せました。今回はすこしマイナーな言語の文字も挙げてみました。

 

Jpn:日本語、 Zho:中国語(標準語・北方方言)、Yue:広東語(南方中国語)、Kor:韓国語、Eng:イギリス英語、Ame:アメリカ英語、Deu:ドイツ語(Deutsche)、Fra:フランス語、Ita:イタリア語、Esp:スペイン語(Español)、Rus:ロシア語、Ell:ギリシャ語(Ellinika)、Bel:ベラルーシ語、Ukr:ウクライナ語、Qaz:カザフ語、Ozb:ウズベク語、Tuk:トルクメン語、Kyr:キルギス語、Mon:モンゴル語Aze:アゼルバイジャン語、Hye:アルメニア語(Hayeren)、Kat:ジョージア語(Kartuli)、Tjk:タジク語、Tur:トルコ語Ara:アラビア語Fas:ペルシア語(Farsi)、Urd:ウルドゥー語Hin:ヒンディー語

 

 

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(↑子音のIPAの表)

 

では、紹介していきます。

 

 両唇音

[ β ] 有声-両唇-摩擦音

(Jpn:語中の『ば行』、Esp:語中のb,v、Tuk:w)

無声音[ɸ]に対応する有声音です。[ɸ]が日本語の『ふ』『ふぁ行』である一方、日本語で[β]は通常現れませんが、早口で話した時に語中の『ば行』の子音が[β]になることがあります。タイトルだけは聞いたことのあるかもしれない、「あばばばば」という小説がありますが、このタイトルを少し早口で言うと、『ば』を発音する際に唇が接触しなくなりますね? この唇が接していない『ば行』の子音が[β]になります。

 

[ ʙ ] 有声-両唇-ふるえ音

メジャーな言語ではこの発音を使う言語が無いので具体例は挙げませんでしたが、音自体はそんなに難しい音ではないです。唇の力を抜いて、『ブブブブブブブ』と唇を震わせたときの音です。

 

歯唇音

[ ⱱ ] 有声-歯唇-はじき音

この音もかなりマイナーです。下唇を上側の歯の裏に添え、下唇を外向きに押し出す(?)と、『ぶ』のような音になると思います。その音です。

 

[ ɱ ] 有声-歯唇-鼻音

上の歯で下唇を噛む、口の形は[f]や[v]と全く同じです。この状態で[m]や[n]に近い音を発音します。

 

[ ʋ ] 有声-歯唇-接近音

(Rus:в Bel:в Ukr:в Hye:վ Hin:व )

[v]に近いですが、[v]よりは摩擦が弱く、『わ行』の子音にも聞こえます。ロシア連邦の首都はモスクワですが、ロシア語での モスクワ をアルファベットに転写すると、”Moskva”になります(ロシア文字では”Москва”)。

 

歯音・歯茎音

[ r ] 有声-歯茎-ふるえ音

(Esp:(語頭の)r, rr、Ita:r、 Rus:р、Ell:ρ、Bel:р、Ukr:р、Qaz:р、Ozb:r、Tuk:r、Kyr:р、Mon:р、Aze:r、Hye:ռ、Kat:რ、Ara:ر、Fas:ر、Urd:ر、Hin:र )

『ㇽㇽㇽラーーーー』

の[r]、巻き舌のrです。IPAの音声学的表記で[r]とすると、厳密には全てこの音になります。発音のコツとしては、舌にあまり力が入らないようにリラックスして、”drrrrrrrr”といった感じの発音をすると[r]の音が出るそうです。僕は、一人でないと行いづらい方法ではありますが、裏声を使って電話の着信音のように”trrr, trrr, trrr”とか、”prrr, prrr, prrr”と発音すると、案外発音しやすいのではないかと思います。

 何かと汎用性の高い音で、大抵の言語の”R”は[r]で発音されるので、[r]が発音できると何かの役に立つかもしれません。

ちなみに、/r/でなく[r]としているのは、精密表記の[r]を使うことで、多少の曖昧さが残る/r/という表現を避けたいからです。

 

[ ɾ ] 有声-歯茎-はじき音

(Jpn:ら、Kor:ㄹ、Esp:r、Hye:ր、Tjk:р、Tur:r、Ame:tt, dd, t, dなど)

日本語の語中の『ら行』の子音の音です。語頭にでも来ない限り、特に発音に困ることは無いと思います。

 ちなみに、アルメニア語(Hayeren)とは、カフカス地方(カスピ海の西、黒海の東)に位置する国の一つ、アルメニア共和国(Hayastan)の公用語ですが、『日本語などのR [ɾ]』と『ロシア語などのR [r]』と『フランス語のR [ʁ]』の三つを区別するという言語です。

 また、英語の聞き取りで厄介になる点として発音変化があるのですが、IPA特集その三でも述べた通り、アメリカ英語では、母音間の[t]や[d]の音が[ɾ]に変化します。betterが”ベラー”みたいに聞こえるという変化です。

 

[ ɹ ] 有声-歯茎-接近音

(Eng:r)

イギリス英語でのrは、舌を反らず発音されるため、[ɹ]になります。アメリカ英語では後述の[ɻ]になりますが、どちらもほとんどすべての参考書では/r/と表記されています。音韻論的表記の/r/で英語のr音を表すのは問題ないですが、本来、音声学的表記である[r]とすると前述の有声歯茎ふるえ音になるので、もはや英語の標準的な音ですらなくなります。

 

[ ɬ ] 無声-歯茎-側面摩擦音

またもマイナー発音です。舌の状態は、[l]と全く同じ状態にします。歯茎と舌先は接触したままの状態で[ç]または[ʃ]のように発音すると、『ひ』とも『し』ともとれない音が出ます。[l]で息が通る道をより狭めて摩擦させる発音です。

 

[ ɮ ] 有声-歯茎-側面摩擦音

(Mon:л)

[ɬ]の有声音なので、[l]の状態で[j]や[ʒ]のように発音すると[ɮ]になります。モンゴル語の特徴的な発音で、近い関係にあるかもと言われるテュルク諸語には[ɮ]の発音はありません。

 

そり舌音

[ ʈ ] 無声-そり舌-破裂音

(Urd:ٹ、Hin:ट,ठ ) 

[ ɖ ] 有声-そり舌-破裂音

(Urd:ڈ、Hin:ड,ढ ) 

まとめました。アメリカ英語のrのように、舌先を上に向けるように反らせて[t]や[d]のように発音すると少し変わった音になるはずです。これがそり舌音です。

 

[ ʂ ] 無声-そり舌-摩擦音

(Zho:sh、Ros:ш、Bel:ш、Hin:ष )

来ました[ʂ]。発音の要領としては[ʈ]や[ɖ]と同様に、舌先を反らした状態で[ʃ]か[s]を発音すれば[ʂ]になります。中国語ではsh;[ʂ]とx;[ɕ]の区別、ロシア語にはш;[ʂ]とщ;[ɕː]の区別がありますので混同しないよう注意してください。ちなみに上海の上(shang)は/ʂɑŋ/、山東省の山(shan)は/ʂæn/になります。

 

[ ʐ ] 有声-そり舌-摩擦音

(Zho:r、Ros:ж、Bel:ж)

[ʂ]の有声音です。舌を反らせて[ʒ]を発音する感じです。舌は口蓋(口内の上の部分)に触れないようにしてください。触れると破擦音の[ɖʐ]になります。ロシア語、ベラルーシ語のжは[ʐ]の発音ですが、中央アジアなどの言語では、多くが舌を反らない[ʒ]で発音します。

 

[ ʈʂ ] 無声-そり舌-破擦音

(Zho:ch,zh)

舌を反らせた[tʃ]です。中国語では、この[ʈʂ]と[tɕ]、舌を反るか反らないかを区別します。その上、中国語では『無気音』と『有気音(帯気音)』の区別があるので、『ちー』と聞こえる子音が四つあることになります。ji [tɕ], qi [tɕʰ], zhi [ʈʂ], chi [ʈʂʰ] の四つです。

 

[ ɖʐ ] 有声-そり舌-破擦音

舌を反らせた[dʒ]です。中国語で、無気音の[ʈʂ]は(破裂音と破擦音は全てですが)、有声化するので[ɖʐ]で発音されていることもあります。『有声音』にせよ『有声化した無声音』にせよ、無気音と有気音を区別していれば問題ないです。

 

[ ɳ ] 有声-そり舌-鼻音

(Hin:ण)

舌を反らせた[n]です。ちょっと暗いというか、少しこもった音になります。舌を反っていない『にゃ行』の子音は[ɲ]という別の音に近くなります。

 

[ ɽ ] 有声-そり舌-はじき音 

(Jpn:ら、Urd:ڑ、Hin:ड़,ढ़ )

舌を反らせた[ɾ]です。ほとんど日本語の『ら行』と同じです。

 

[ ɻ ] 有声-そり舌-接近音

(Ame:r)

アメリカ英語のrの音です。英語の参考書などではほとんど/r/と書かれていますが、音声学的表記では[ɻ]と表します。

 

[ ɭ ] 有声-そり舌-側面音

(Kor:ㄹ、Hin:ळ )

舌を反って[l]を発音します。韓国語のㄹとありますが、[ɭ]の発音になるのは、母音の前に付くときではなく、音節末に来た場合です。例:서울(Seoul:ソウル)のㄹ。この場合、アルファベット転写をするとrではなくlになります。また、lで終わった音節の次にrが続く場合、l+r=ll になります。例:신라(新羅。シルラ。文字のまま転写するとShinraとなるが、n+r = l+r = llと発音変化を起こす)

 

硬口蓋音

[ c ] 無声-硬口蓋-破裂音 

(Tur:k、Hin:च,छ )

日本語の『ひゃ行』の子音[ç]を発音する位置で、『きゃ行』を発音すると[c]になります。日本語の『きゃ行』『き』『け』も[c]になることがあります。

 

[ ɟ ] 有声-硬口蓋-破裂音

(Aze:g、Tur:g、Hin:ज,झ)

[c]の有声音なので、『ぎゃ行』の子音のように発音しますが、大抵、日本語の『ぎゃ行』の子音はもう少し口の奥で発音されます。『きゃ行』も同様です。

 

[ ʝ ] 有声-硬口蓋-摩擦音

(Deu:j)

接近音の[j]よりも舌面と口蓋を近づけ、『や行』と『ぎゃ行』の間の発音をします。舌と口蓋が接しない『ぎゃ行』と捉えてもいいかもしれません。

 

[ ɲ ] 有声-硬口蓋-鼻音 

(Esp:ñ、Fra:gn、Ita:gn、Hin:ञ )

『にゃ行』の子音に近い、ラテン系言語に特徴的な音です。日本語の『にゃ行』よりは若干奥で発音されます。上記の通り、スペイン語には[ɲ]を表す文字が追加されています。

 

[ʎ] 有声-硬口蓋-側面音

(Ita:gl、Esp:ll)

イタリア語やスペイン語『ッリ』『ッリャ』などと表される音です。『や行』の子音 [j]や『ひ』の子音[ç]と同じ位置で、[l]と同じように発音します。

記号に関して、ギリシャ文字のλとは左右逆なので気を付けてください。

また、スペイン語のllの綴りには、地方によって[ʎ]以外にも多くの発音があります。スペインでの標準語では[ʎ]ですが、中南米スペイン語では[ʝ]や、[ʑ]と発音されるそうです。ちなみにyもllと似た発音になりえます([ʝ]や[ʑ]など)。

 

両唇硬口蓋音

[ ɥ ] 有声-両唇硬口蓋-接近音

(Zho:yu,ü、Fra:u )

子音[y]に対する接近音です。中国語では、ピンインでüもしくはyuの直後に母音が続く場合のyuで[ɥ]の音を表します。yi--の場合のyiは[j]を表します。フランス語も、uの後にiなどの子音が続いたときにuが半母音となって[ɥ]と発音されます。

 

軟口蓋音

[ x ] 無声-軟口蓋-摩擦音

(Zho:x、Rus:х、Ell:χ、Bel:х、Ukr:х、Qaz:х、Ozb:x、Tuk:h、Kyr:х、Mon:х、Aze:x、Hye:խ、Kat:ხ、Tjk:х、Ara:خ、Fas:خ、Urd:خ、Hin:ख़)

 案外多くの言語で用いられる音です。発音の方法ですが、『か』をとてもゆっくり発音すると、『...カㇵアー』のように、[k]のあと一瞬[h]に似た音が入ると思います。この音が、実は[h]ではなく[x]となります。調音点(発音する位置)が[k]や[g]と同じなので、このような方法で[x]の感覚をつかむことができます。[x]の感覚がつかめたら[k]を抜いて[xa]や[xo]と発音してみましょう。

 中国の地名によくある字、『河』の発音はピンインでhé、IPAで [xɤ] となり、『湖』はピンインでhú、IPAで [xu] となります。例えば黄河(Huánghé)はホワンホー、河北(Héběi)はホーペイ、湖北(Húběi)はフーペイと書かれますが、実際はそれぞれ[xʊaŋxɤ]、 [xɤpeɪ]、 [xupeɪ]となります。『河』に関しては母音も正確にカナ転写できません。ただ、子音[x]と母音[ɤ]は、調音点が非常に近いのでどちらか慣れればもう一方も発音しやすくなると思います。

 ローマ字に転写される場合は、中国語の場合hとなり、ロシア語などのxはkhとなり、ギリシャ語のχはchとなります。

 また、ドイツ語のchは母音の直後に現れ、ach, uch, ochでは[x]と発音されますが、ich, ech でのchは[ç]となります。一人称単数の代名詞 "ich" は[iç]となります。

 スペイン語では少々厄介で、まずjは[x]で発音されます。そのうえgが場合によっては[x]で発音されます。というのは、ga, gi, gu, ge, goのうち、ga, gu, goのgはそのまま[g]と発音しますが、gi, geのgは[x]で発音されます。そのため、『シゲル』とスペイン語で書こうとしてShigeruと綴ると[ʃixeɾu]となってしまいます。[ʃigeɾu]としたい場合はShigueruと綴るとスペイン語ではシゲルと読みます。逆に、『は行』を表したい場合、例えば『オオハシ』と綴る場合、Ohashiと綴ると、スペイン語ではhが一切発音されないためオオアシとなってしまうので、Ojashiと綴ると[oxaʃi]となってオオハシに近く発音されます。オオハシシゲルさんはスペイン語で名前を綴るときはOhashi ShigeruではなくOjashi Shigueruとしましょう。

 

[ ɣ ] 有声-軟口蓋-摩擦音 

(Jpn:が、Ell:γ、Bel:г、Qaz:ғ、Ozb:gʻ、Aze:ğ、Ara:غ、Fas:غ،ق、Urd:غ、Hin:ग़ )

[x]の有声音です。とはいっても日本語話者にとっては、[x]より[ɣ]の方が発音しやすいのです。IPA特集第三回にも記載しましたが、日本語の[g]は語中にくると音が変化し、[ŋ]もしくは[ɣ]になるからです。例:雅楽[gaŋakɯ]または[gaɣakɯ]  

 ただ、[ɣ]は摩擦音なので日本語以外で語頭にきた場合は[g]とならないようにしてください。

 

[ ɰ ] 有声-軟口蓋-接近音

(Tur:ğ)

摩擦音より少し舌と口蓋を離すと接近音になります。[ɰ]の場合、調音点が同じ[ɣ]より舌と軟口蓋とを離します。日本語で、語中の『が行』はかなり早口で話した時に[g]→[ɣ]→[ɰ]と変化しているかもしれません。トルコ語のğは必ずしもこの発音ではなく、発音しないこともあります

 

[ ʟ ] 有声-軟口蓋-側面音

[k]や[g]と同じ位置で[l]のように発音します。英語のlは[l]と同時に後舌と軟口蓋が接近(軟口蓋化)するので、[lˠ]となり、[ʟ]と発音されることもあります。

 

口蓋垂

[ q ] 無声-口蓋垂-破裂音

(Qaz:қ、Ozb:q、Tuk:k、Kyr:к、Kat:ყ、Tjk:қ、Ara:ق、Urd:ق、Hin:क़ )

 口蓋垂音とは、軟口蓋より奥の、いわゆる喉彦で行う発音です。

 

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口蓋垂の位置(http://suimin-shougai.net/uppp%E3% より)

 口蓋垂音を持つ言語は主に中央アジアから西アジアにかけて存在し、ドイツ語やフランス語の口蓋垂音はヘブライ語などの影響を受けたのではという説もあります(あくまで一説です)。

さて、破裂音に話を戻し、[q]の音はやはり北アフリカ西アジアアラビア語中央アジアの言語などに見られ、『か行』の子音に聞こえます。[k]よりさらに舌が奥の位置に動き、喉を狭める感じで発音するというか、説明が難しいのですが、比較的音声資料の多いフランス語やドイツ語のR ([ʁ]または[ʀ]) で口蓋垂音の感覚を掴んでからのが発音しやすいかもしれません。アラビア語などにも[ʁ]はあります。

 

[ ɢ ] 有声-口蓋垂-破裂音

 [q]の有声音です。『が行』の子音に聞こえますが例によって[g]より奥で発音します。口蓋垂音の位置さえ掴めば簡単です。

 ちなみに、日本語での語末の『ん』は、IPA特集3で紹介した通り口蓋垂鼻音[ɴ]なので、これを利用して「三.......階」などと発音すれば[saɴ...qai]となって口蓋垂音を発音できるかもしれません。この方法の場合、いかに『ん』の発音[ɴ]の状態を崩さずに次の[q]に繋げられるかにかかっています。[saŋkai]とならないように。無論、通常の発音は[saŋkai]や[saŋŋai]になります。

 

[ χ ] 無声-口蓋垂-摩擦音

(Tuk:h、Hye:խ、Tjk:х)

 [q]の位置で発音する摩擦音です。日本語話者には『は行』に聞こえます。が、上記の無声軟口蓋摩擦音[x]よりかすれた音(?)に聞こえます。もともと有声音の[ʁ]で発音されるフランス語のRなどは、語末で無声化して[χ]になります。例: noir (Fra:黒) オランダ語のgもこの音です。

  一方、西アジア中央アジア~モンゴルにかけての地域で/x/と発音される文字は、[x](軟口蓋音)と[χ](口蓋垂音)の中間的な音、もしくはどちらでも通用する音(自由異音)です。

 また、表記に関して一点、[χ](←ギリシャ文字。下に伸びる)は時に[x](←ラテン文字。下に伸びない)とされていることがあります。よって[x]は必ずしも軟口蓋音を表すという訳ではないという点に注意してください。

 

[ ʁ ] 有声-口蓋垂-摩擦音 

(Fra:r、Deu:r、Qaz:ғ、Tuk:g、Kyr:г、Hye:ղ、Kat:ღ、Tjk:ғ)

 [χ]の有声音です。フランス語のRの音として有名です。(Fra:) Parisのrの音。フランス語ではRがこの音を表しますが、Rの文字からは少し想像しづらい音だと思います。どちらかというと『が行』の子音の方が近いのでは、というほどです。

 また、[χ]の項で述べた、自由異音が多い、ということもこの音の特徴です。フランス語やドイツ語では前述の[r]や後述の[ʀ]と自由異音の関係にあり、中央アジアの言語では前述の[ɣ]や[ɢ]と自由異音の関係にあります。中央アジアのRは[r]か[ɾ]です。

 

[ ʀ ] 有声-口蓋垂-ふるえ音

(Deu:r、Fra:r)

調音点は[q]や[χ]と同じ口蓋垂、調音方法は[r]と同じふるえ音です。

 ドイツ語とフランス語のRについては、フランス国内及びドイツ国内でも地方差が大きく、前述の通り主に[r]、[ʁ]、[ʀ]の三種類が混在しています。

 他の言語においては、[ʁ]はそこそこ見られる一方、[ʀ]を持つ(メジャーな)言語は少ないです。舌の根本の方を喉の奥に着けるイメージで、『が』のような感じの発音をすると[ʀ]が出ます。オランダ語のRもこの音です。

 

咽頭

[ ħ ] 無声-咽頭-摩擦音 

(Ara:ح )

咽頭音と言われてもなかなかピンと来ないと思います。僕もアラビア語の音を調べていて、最近やっとコツをつかみ始めたところです。発音の方法ですが、冬の寒い日、手に息を吹くときに「ハー」としますよね? このとき、『は行』の子音[h]と若干異なるのがわかるでしょうか(息の吹き方にも個人差があります)。おそらくこの音が無声咽頭摩擦音になっていると思います。

 『は行』に聞こえる音を調音点順に並べると、(手前)[x], [χ], [ħ], [h](奥) となります。

 

[ ʕ ] 有声-咽頭-摩擦音

(Ara: ع)

[ħ]の有声音で、一見(一聴?)すると子音が無さそうな感じもします。[ħ]と同様に有声摩擦音の一部を調音点順に並べると、(手前)[ɣ],[ʁ],[ʕ],[ɦ](奥)となります。

 

声門音

[ ʔ ] 無声-声門-破裂音

(Ozb:ʼ Tjk:ъ Fas:ع Urd:ع ء )

何やら特殊な音だと思われますが、実は日本語にも(隠れて)存在している子音です。日本語で[ʔ]が現れるのは二つの場合。

 一つ目は語頭の『あ行』です。『あ行』を発音する際に喉の奥で破裂音が出ている感じがあると思います。ただこの場合は個人差等もあるので、よりわかりやすい二つ目の場合。

 それは母音の前後に促音『っ』が入る場合です。「あいうえお」 [ʔaiɯeo] や、「あーいーうーえーおー」 [ʔaːiːɯːeːoː] と発音しても語頭以外には[ʔ]は現れませんが、「っあっいっうっえっおっ」 [ʔaʔiʔɯʔeʔoʔ] では[ʔ]の喉が締まる感じをより簡単に体験できると思います。

 

[ ɦ ] 有声-声門-摩擦音

(Ukr:г Urd:ہ Hin:ह )

 この音も日本語に現れることがあります。早口で話したとき、少し雑に話したときに、語中の[h]がこの音に変化することがあります。[h]だけなので『ひ』『ふ』は語中でも語頭でも[ɦ]にはなりません。

 英語でも速めの会話では強調される部分を除き[h]が[ɦ]になります。

 また、韓国-朝鮮語では、破裂音や破擦音が語中で有声化するのと同様に[h]をあらわす”ㅎ”が語中では有声化して[ɦ]となります。なので『は行』と『あ行』の中間的な音に聞こえます。

 

 補助記号

とりあえず、基本的な記号はこれで終わります。次に、頻度の特に高い補助記号をいくつか紹介して終わりにします。

 

[ ʰ ] 有気音(帯気音)

 [ʈʂ]の項で少し述べましたが、有気音を表す記号です。そもそも有声音と無声音は何が違うのかというと、調音が起こる瞬間(破裂音なら破裂する瞬間、摩擦音なら摩擦する瞬間)に声帯が震えている(発声している)かどうかの違いです。調音が起こる瞬間に発声が無ければ[q],[t],[ts],[p],[s],[f],[h],[k],[x],[c]などの無声音調音が起こる瞬間に発声が有れば[w],[r],[d],[dz],[g],[j],[l],[z],[v],[b],[n],[m]などの有声音になります。そして、調音が起きた後に発声が始まれば、有気音となります。有声音を有気音化したものは[ʰ]ではなく[ʱ]を使います。[dʱa]など。

 例えば[pʰa]は、ゆっくり発音すると[p]と[a]の間に[h]に似たような音があり、無理矢理カナにすると『プㇵア』のようになります。同様に[tʰa]は『タㇵア』と聞こえます。

 英語やドイツ語にも有気音と無気音の区別はあるのですが、文字の位置関係で自動的に決まっているので区別する必要もなく、意味の違いも発生しません

 一方、中国語や広東語、韓国-朝鮮語モンゴル語タイ語ヒンディー語など、アジア言語の多くは有気音と無気音の使い分けがあります。代わりに中国語やモンゴル語では有声音と無声音を意味上は区別しません。[p]と[pʰ]は区別し、[p]と[b]の意味上の区別は無い、ということです。

 韓国-朝鮮語は少し複雑で、例えば両唇破裂音を見ても、語頭でㅂ[p], ㅍ[pʰ], ㅃ[pp]の三種を区別し、時には変化し、語中ではㅂ[b], ㅍ[pʰ], ㅃ[pp]の三種の区別-変化があります。語学上は『平音』『激音』『濃音』と呼ばれるものです。(前後の子音の影響を無視すれば)平音のみは語頭で無声音、語中で有声音になります。

 

[ ʲ ] 口蓋化

口蓋化は、子音を発音する際に口蓋(特に[j]を発音する辺り)が狭まる変化です。日本語では『い段』の音全てに発生しています。『き』は[kʲi]、『に』は[nʲi]、『み』は[mʲi]、『り』は[ɽʲi]といったところです。また、『さ行』『ざ行』『た行』『だ行』『は行』に関しては、口蓋化がより進み、『あ段』『え段』『お段』とは異なった音になっています。それぞれ[si]→[sʲi]→[ɕi]、[zi]→[zʲi]→[ʑi]、[ti]→[tʲi]→[tɕi]、[di]→[dʲi]→[dʑi]、[hi]→[hʲi]→[çi]となります。また、『拗音』がついた音も、口蓋化した子音です。[ˈtoʊkjoʊ]はトウキヨウ、[toːkʲoː]がトーキョー、という感じです。

 ロシア語では多くの子音に口蓋音と非口蓋音の対立(区別)があり、ь[ʲ], и[ji], е[je], я[ja], ю[ju], ё[jo]の直前の子音は口蓋化され、ъ(無音), ы[ɨ], э[e], а[a], у[u], о[o]の直前の子音は口蓋化されません。т[t], ть[tʲ]といった感じです。ちなみにыは一文字です。

 

[ ˠ ] 軟口蓋化

子音を発音するときに、同時に舌の奥の部分が持ち上がる変化です。英語のLのうち、子音の前後、語末のものが該当します。軟口蓋化することで、音が暗く聞こえるので、英語のLは『暗いL(Dark L)』と言われます。

 

[ ʷ ] 円唇化

IPA特集二回で母音を紹介した際、円唇母音と非円唇母音があると書きました。円唇母音は/[y],[u],[o]などでした。同様に、円唇化した子音は発音するときに唇を丸めて発音するような変化です。英語ではWの直前の子音やUの前後の子音が円唇化します。

 

[ ˡ ] 側面開放

破裂音の直後に同じ調音点の側面音が続く場合、例えば[tl]や[dl]は、二つの音が別々に発音されるのではなく、同時に発音されます。このとき、[t]や[d]は側面開放して[l]に続きます。本来[t]や[d]は舌先と歯茎が完全に離れますが、[tˡ]や[dˡ]は、[l]で接触する部分は離れずに接触したままになります。[tl]、[dl]はそれぞれ[tˡl]、[dˡl]となります。

 

[ ⁿ ] 鼻腔解放

速い会話では、破裂音の直後に同じ調音点の鼻音が続く場合、例えば[tn]や[dn]は、[t]や[d]が完全に発音されず、『ッ』のようになります。例えばwrittenは「リトゥン」ではなく「リッンン」のように発音されます。このときの発音がアメリカ英語で[ˈɻɪtⁿn]となります。

 

[ ː ] 長音

案外大事なものを後回しにしてしまいました。日本語で言う『ー』です。漢数字の一ではありません。

母音に付いた場合は単純に長くのばして発音します。[aː]は『アー』、[iː]は『イー』といったところです。ただ、ここで注意が必要なのが[yː]だと思います。[y]については前回のIPA特集で紹介しましたが、[ju]とは違って一つの母音なので、[yː]も途中で音が変化することはありません。[juː]とならないよう注意してください。

 この記号が子音に付くこともあります。一般には摩擦音に続きます。[sː]や[ʃː]などです。これらは[ssss...]や[ʃ ʃ ʃ ʃ...]という感じに発音されます。「静かに!」のときの音が[ʃː]や[ɕː]です。ロシア語のщは[ɕː]と発音されます。ロシア料理のシチーはロシア語でщиと綴り、[ɕːi]と発音します。

 

[ ˈ ] 第一アクセント
[ ˌ ] 第二アクセント

 

参考文献

改訂 音声学入門

改訂 音声学入門

 

 

あとがき

 以上、日本語と英語で使われないものを中心に紹介しました。これらの発音記号が読めるようになると、併記されているIPAで正しい外国語読みができるようになります。

 過去のIPA特集でも少し話した通り、これらの記事が、新しい言語に触れ、また、知っている言語についても新しい方向からのアプローチで、新しい知識を僅かでも増やせるきっかけになれたなら幸いです。

 また、このブログの方針としてもIPAをどんどん使っていけるので、外来語の元となった原語を含めながら言語学や地誌学の話ができるようになりました。僕は外来語はなるべく原語に近い発音で使いたいもので。特に漢字語。

 次回はまた少し間が空きますが、音声学以外の分野の記事もどんどん増やしていく予定です。詳しくは今後の予定を軽くまとめたものがあるので詳しくはそちらで。

lhzuoteng.hatenablog.jp

 

 

では、今回はこの辺りで。

再见。

안녕히 계세요.

До свидания.

 

1948年12月10日 世界人権宣言が採択された日